オフセット印刷・オンデマンド印刷とは?それぞれの違いや特徴【印刷豆知識シリーズ】
印刷にはいろいろな印刷方式がありますが、今回はその中でも代表的な”オフセット印刷”、”オンデマンド印刷”について、どんな仕組みで印刷しているのかや特徴などを紹介していきます。
オフセット印刷とは?仕組みと特徴
そもそも”オフセット”と呼ばれる由来ですが、この印刷方式は、印鑑やスタンプのようにインクの付いたものを直接紙に押し当てるような仕組みではなく、一度別の媒体を介して間接的に印刷するため、オフセット印刷と呼ばれています。

オフセット印刷の仕組み
オフセット印刷の仕組みがより理解できるように、皆さんもよく知っている”版画”と比較しながら説明していきますね。
皆さんは小学生のころ、版画をしたことはありますか?
版画の仕組みはかなり単純です。木の板を削って凹凸を付けることで、紙にインクが付く部分と付かない部分を作り、文字や絵を再現しています。

一方で、オフセット印刷の場合は少し複雑です。凹凸ではなく”油と水がはじく性質”を利用して、文字や絵を再現しています。
ちょっと難しいかもしれませんが、下の図のような仕組みになっています。図でいうと、油=インキ(※)、水=水分です。水の部分は油をはじいてしまうので、インキが付着しません。
※「インク」と「インキ」は、どちらも同じものを指す言葉ですが、一般的に印刷業界では「インキ」と呼んでいます。主に油を媒体とする印刷のときは「インキ」、水を媒体とする筆記用のものを指すときは「インク」と呼び分けることが多いです。

もうひとつ、どのように文字が印刷されるのか、下の図で説明します。
まず、アルミ製の板状のもの(版)に、化学的な技術を使ってインキが付く部分と付かない部分を作ります。その後、その版をインキローラーに通し、一度ゴム製のローラー(ブランケット)に印刷内容を転写します。ゴム製のローラーについたインクを用紙に移すことで印刷が仕上がります。

オフセット印刷の特徴
オフセット印刷には、下記のような特徴があります。
メリット | 大量印刷に向いている 大きいサイズの印刷もできる 高精細で綺麗に仕上がる オンデマンド印刷に比べて色味の再現度が高い |
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デメリット | 少部数だと割高になる 版を作る必要があるので、コスト・時間がかかる 機械によっては印刷が乾くのを待つ必要がある 大量生産する分、廃棄となる予備紙が多い |
製品例 | 1万枚程度のA4チラシ、A1サイズの大きなポスター、化粧品など商品の色にシビアな広告物 など |
オンデマンド印刷とは?仕組みと特徴
こちらも名前の由来からお話します。
”オンデマンド”は、英語の”on demand”からきており、「要求・必要に応じて」という意味があります。
オンデマンド印刷は最小ロット1部から印刷が可能なため、「必要な部数だけ提供できる印刷」ということでこのように呼ばれています。

オンデマンド印刷の仕組み
”印刷”と聞くと、コンビニや自宅にあるプリンターで印刷するところを想像する人が多いのではないでしょうか。オンデマンド印刷は、どちらかというとそういったプリンターに近い仕組みで印刷しています。
先ほどのオフセット印刷が粘度の高い液状のインキを使う一方、オンデマンド印刷では粉状のトナーを使います。
そのため、静電気の性質を利用して紙にトナーを付着させ、熱を加えて溶かして定着させることで印刷しています。

上の図をもとに、①~⑤の順に仕組みを見ていきましょう。
- 図の中央にあるドーナツ型の筒は「感光体ドラム」と呼ばれています。まず、この感光体ドラムにマイナスの電気を帯びさせます。
- 次に、トナーが付着してほしい部分だけプラスの電気で帯電させます。
- トナー自体はマイナスの電気を帯びているので、感光体ドラムのプラス部分とくっつきます。
- その後、トナーが感光体ドラムにくっつきながら回転します。用紙の近くに来たとき、外側からより強力なプラスの電気を当てます。そうすると、トナーのマイナスは感光体ドラム側のプラスから離れ、強力なプラスの電気に引き寄せられて用紙に移ります。つまり、トナーが用紙にのるということです。
- しかし、トナーは粉状なので、このままだと印刷がうまく仕上がりません。そこで、熱を加えることでトナーを溶かし、定着させることで印刷が完成します。
オンデマンド印刷の特徴
オンデマンド印刷には、下記のような特徴があります。
メリット | 少部数の印刷に向いている 版を作る必要がないので、安価かつ短納期 ページ数の多い冊子の印刷が得意 宛名印字など1枚1枚印刷内容が異なるバリアブル印刷ができる 機械によっては、印刷から製本加工(ホッチキス留め、中綴じ、折り加工など)まで一気にできる |
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デメリット | 大量に印刷すると割高になる オフセットに比べて機械が小さいので、印刷物のサイズに制限がある オフセットに比べて精細な表現が難しい |
製品例 | 名刺、封筒、DMはがき、100枚程度のA4チラシ、会議用の資料、100ページ程度の論文集 など |
オフセット印刷とオンデマンド印刷の違い
仕組みを比べると分かるとおり、2つの大きな違いは、印刷のために”版”を作る必要があるかどうかです。
オンデマンド印刷は版を作らない分コストがかからず、かつ工程が1つ省略される形になるので、早ければその日のうちに仕上げることができるんです。
ただ、オフセット印刷は版を作るからこそ高精細な再現が可能、という捉え方もできます。


まとめ
いかがでしたか?印刷の仕組みのお話はちょっと難しかったかもしれませんね。オフセット印刷もオンデマンド印刷も、それぞれ化学的な性質を利用しているのは意外だったのではないでしょうか。
この記事はあくまで「印刷の時にオフセットやオンデマンドって聞くけど、どういう意味なんだろう?」という方に向けた内容なので、細かく覚える必要はありません。
印刷物を作るときは、私たちがお客さまのご要望に応じてベストな印刷方式をお選びするので、安心してプロにお任せください!
以上、ちょっとした印刷知識のご紹介でした。
化学的な仕組みを利用して、印刷物を仕上げているんだね!